本コラム連載最後の回 発展しきった国にはない 余裕の心をもつインド人 インド連載最終号。連載100回を振り返ると本当に色々書かせていただきました。感謝感謝です。今朝は京都から夜行バスで東京へ、東京アメリカンクラブスパでリフレッシュ後、キリンホールディングス本社へ向かう車から昨晩お世話になった小料理屋「知里十利」の弁当をつまみながらお届けさせていただきます。
最終号は弊社東京の事務所のWe Work受付嬢の話をヒントに。22歳で年収は前職のレストランスタッフの2倍になり、聞くと東京のタクシー運転手の初任給と同じくらい。インドはこの10年、経済成長率が平均約7%上昇し、給料もそれに伴い継続的に上がってきた。例えば弊社ムンバイ事務所の運転手さんは2倍になっている。10年いるスタッフは10倍にも。 真の豊かさには金銭的余裕が不可欠だろう。余裕はしかし個々により定義が違う。「余裕ありそう」に見えてもそうでもないかもしれない。 そんななか僕が感じるのは、日本とシンガポールは比較的生活に不自由はないのだが、余裕を持っている人はインド人より全体的に少ない気がする。インド人の気質なのか心構えなのか、なぜか余裕を感じる。暑くて混沌とカオスの中で生活していても、何かしらの余裕を感じる。素晴らしいといつも思う。 経営者である著者も皆さま同様、余裕を持ちたいと望んでいます。今までお付き合いありがとうございました!May I wish you the best and thank you Harry Hakuei Kosato. わさびシリーズの輸出も成功となるか 日本商品を輸出するか、 インド国内生産を目指すか? 次号は連載100回目となりますが、毎週書いてきた本コラムを終了させて頂こうと思います。来春いくつかプロジェクトを企画しており、ご理解いただければ幸いです。長い間のご愛読感謝しております。
ラスト2回の今回は、インド市場への展開について相談に来られた方のお話を。わさびを静岡で加工製造している商品には、わさびオイル、わさびアヒージョ、わさびせんべいなどあり、どれも美味しく、パッケージも美しい。しかし、残念ながら今現在のインドではこれらの商品は売れないだろうと意見を述べた。輸入制限もあるなか、価格にセンシティブなインド人。「この商品が欲しい!」と一度はインド側のバイヤーは言うだろう。が、成立した例は本当に数件しかないのが事実である。 「わさび商品を13億人のインド市場に売りたい」との企業側の想いは分かる。最近イギリスでわさびの生産を英国国内で成功させたとの記事を目にした。生ワサビを必要とするロンドンの飲食店に卸している。わさびをインド国内で作り、限られたトップエンドのマーケットへの販売はまだ可能性があるが、日本からわさびオイルなどを大量に売るのは難しい。 今、山形の株式会社アスクは日本米をインド国内で生産している。そのサンプルが先週著者のムンバイオフィスに届き、試食を進めている。この手のインド国内での生産事業は5年10年後化ける可能性がある。日本が今後、食品輸出に力を入れていく方向性は理解できるが、インドはインド国内での生産の方が大きな成功があるように思う。日清はカップラーメンを長年インドで販売、大塚製薬は最近ボンカレーを販売すると発表。この先の展開が楽しみだ。 富裕層のインド人は子どもを塾へ 全寮制学校の入学希望者も増加 アジアのインター校もトレンド 今回はインドの塾、インドのトップのボーディングスクール(全寮制)について調べてみた。インドから海外留学する人数は現在約56万人。中国から海外留学の学生数は60万人、日本からは10万人弱。この10年でインドと中国の留学生の数が大きく伸びた。
KUMONはインドで大成長しており、塾ビジネスも巨大なインド。一対一の家庭教師は一時間1000ルピー〜4000ルピー(1700円〜6800円)が相場。データでは特に都心部の小学生87%が塾に、高校生は95%が塾に通うという。一大ビジネスに成長している塾業界は年率35%以上で伸びており、デリー近郊のみで50万人の塾の先生がいるという。 また、ボーディングスクール生は塾に通うのではなく、全寮制のエリートは徹底的に勉強の環境を全寮制の学校内で整える。例えば、有名校にはThe Doon School(Dehradun)、Bishop Cotton School(Shimla)、Mayo College(Ajmer)が名を連ねる。最近日本のインター校にも多様化が見えるが、特に英国の親は、高校で英国トップのボーディングスクールの入学を子どもに勧める。著者も日本のインター校経験者だが、最近のトレンドとしてアジア、特にシンガポールのインター校の教育水準が上がっており、日本よりアジア、英国、スイスなどのボーディングスクールに入学させたい親が増えたようだ。インドの富裕層は国内のみならず、英国、アジア、スイスの学校にも大勢子どもを送り込んでいる状況だ。さらにこの後10年、インドと中国では、教育競争が激しくなるだろう。 イギリス名門大学を目指し 成功したインド人の強いネットワーク 高いモチベーションと教育熱 この2日間、大学の後輩のインド人2人と再会したのだが、2人は30歳を前にしてかなりやり手だ。1人は今、英国で新しい大学設立の構想を進めており、もう1人はバイオテックで某日本製薬会社と契約し、数億円を投じ新薬の開発を何本も突き進めている。
そこに偶然、彼らの友達のコンサルタント会社マッキンゼーのロンドン在住インド人とその婚約者で英国人医師が現れた。また、その友人の不動産業をバンガロールで営むインド人、その婚約者でムンバイの起業家も集まった。会話は英国のBrexitからインドの寿司事業、バンガロールの生活、ラオスでコーヒー畑を設立したなど多岐に渡った。インドと英国は、ロンドンという大都市において面白いネットワークで繋がっていると感じる。 翌日、教育関係の仕事をコルカタでスタートする後輩の友人にも会った。オックスフォードとケンブリッジ大学の入試を富裕層の親と受験者にコンサルするという。通常、大学への入試支援は500英ポンドだが、1700英ポンドでもインド富裕層は大勢集まるとのこと。その話の途中でムンバイ一の国際学校の校長にも会え、インドエリート学生の世界大学への進出について色々教えていただいた。TATA財閥の会長の息子も教え子だという。 インド人学生の成功の秘訣は、「Simply, their motivation is high(簡単なことでモチベーションが高いからだ)」と校長。来月もムンバイでこの校長を訪問し、世界トップスコアのIBディプロマを排出する開校12年の同学校、元々60人の学生が今や1000人のマンモスエリート校。益々インドの優秀な学生がオックスフォード、ケンブリッジ等を目指し、更に教育競争がヒートアップする気がしてならない。 ロンドンでインド人が富裕層向け レストランを出すのは成功モデルの一つ インドでは富裕層向け中華料理店も多い 本日は、バッキングハム宮殿の裏手オックスフォード&ケンブリッジ倶楽部から。雲一つない心地いい英国の夏を満喫している。
今日は英国におけるインド料理、インドにおける中華料理について。1990年頃サントリーがロンドンで高級和食レストランを展開していた場所に、今はインド料理の最高級レストラン「CHUTNEY MARY」がある。倶楽部から歩いて3分、St.Jamesの中心地。著者はオーナーのCamellia Panjabi氏のムンバイのご自宅に数年前招かれたこともある。高級インド料理店を多数展開し、成功を収めている。ロンドンでインド人富裕層が世界の富裕層向けにレストランを展開するのは、一つのステータス。そこには激しい競争の世界がある。 インドの大手ホテルの中華シェフだった友人に6年ぶりにロンドンで会った。彼は今、世界に37店舗展開する大手中華チェーン店のナンバー2の料理担当。ロンドンの旗艦店は、週の売上がなんと4000万円。1店舗200席あり、夜だけで700人に料理を提供する日もあるという。インド国内にもロンドン発のこのチェーン店の姉妹店があり、インド富裕層がモダンな中華を毎日楽しんでいる。 インドの中華は「Indian Chinese」が主流。少しスパイシーでユニークな味わいだ。ロンドンの街も以前に比べるとインド人が増えた感じを受ける。ヒンディー語がよく聞こえ、大勢の家族連れが大きいショッピングバッグを持ち歩く。高級インド料理を食べるロンドン駐在のインド人、世界の富裕層、また大勢のインド人が中華を食べる。2つの巨大大国の食がロンドンで戦っているようだ。 |